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eau de vie撮影レポート
■Vol.19■ 10月24日「根岸さん、ありがとう」

みんな寝てないよな・・・。大丈夫かな。 昨夜というか、今朝、凍えた海から生還後、いよいよ撮影はクライマックスに向けて突入する。
眠い頭で「フィニステール」。 あれ?夢を見てるのかなと思ったら、順三郎とあやこがフロアでくるくると踊っているのでした。あやこのピンクのドレスは不規則に舞い、花びらが散ってくよう。そう、本当にあやこは散ってしまったのだから。 だから切ない。 だってここでなぜ2人はこんな風にダンスをするのか、ということをふまえると心が痛くなるのですよ。 今となってみると、この酒場「フィニステール」は本当にあっと言う間に、ヒトたちの悲しみ、愛情(お芝居でも)によりかなり濃い店になってしまったような気がします。
あんなに初めは新鮮な空気が漂っていたのに、だいぶいい具合にくたびれてしまったよう。それだけ数々のドラマが短期間のうちに生まれてしまったのです。
私も映画の中のように本当の常連になりたかった。 毎晩 eau de vie でも飲みながら、店のように淋しく、くたびれた女になりたい。よし、なろう。
なぜゆえ人は酒を飲むのか。その答えは一生分からなくていいような大きな疑問だが、おいいしい酒の価値とその魅力、それにとりつかれた人間の弱さ、どうか許して欲しい・・・と世の中にお願いしたくなるような思いです。
順三郎を見てつくづく私も罪深い人間だと、ふと嫌になった。かといって反省は全然していないけれど。

次は「フィニステール」表。相馬倉庫のセットに再び。かわいい少年順三郎、本間真平君の登場だ。まだ酒なんて全く知らない(当たり前だけど)清い体。そうか、順三郎にもこんな頃があったか。これから君は汚れ物になるんだよと、お姉さんとして忠告しながら抱きしめたくなった。お母さんごめんなさい。
けれど真平君のたたずまいは、まれにみる澄んだ光を発しているかのよう。ピンと背すじを伸ばしニッコリほほえむ様子は草食動物のそれだった。ほめ言葉です。

彼を入れた合成用のカットを撮っている間、控え室になっている喫茶店のカウンターで順三郎とあやこさんとお茶をした。あれこれ彼ら自身の役どころについて楽しく話しをしたのだが、あやこの鰐淵さん曰く、あやこという女性は自分ととても一致したものを感じる。まさに理想の女性像でもあるとおっしゃられ、非常にうれしかった。横で順三郎がうなずいた。そりゃあなたにはそうでしょう。幸せ者。
私だって・・・鰐淵さんのあやこなんて・・・彼女への賛辞の言葉は今までさんざん書いたのであえて今日は何も言いませんよ。 けれど間近で見るあやこはふっくらした顔を上下させ、母というものについて語ってくれました。

そして今夜の最後、突然ゲストがカメラ前に立ったのです。
陣中見舞いにお越し下さった根岸季衣さんが、予感めいたさまよう女として「フィニステール」前で順三郎とすれ違う。
現場ではキャッキャはしゃいで楽しんでいた彼女もカメラに写ると、ガラっとその表情、雰囲気を変えるのです。しかも彼女は今までの出演者の中で唯一、酒がちゃんと入った状態でやってくれました。よしそうでなくっちゃ。
本当にありがとう。これで「eau de vie」はまた一つ女の匂いが加わったのです。

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