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eau de vie撮影レポート
■Vol.17■ 10月22日「三日月のち雨」

来た。最後の死体、あやこの日だ。
古川町の浜であやこは新雪となって降りつもる。eau de vie は普通凍結しないから、あやこは驚くほど冷えたのだろうか?
例のごとく見事なライティングで浮かび上がった浜は全体的に発光しているようなツヤをのばして、どこまでも広がっているようです。普段は見えない夜の波打ち際が見えます。黒い海とまとわりつく白い波、泡、くさりのように水がからまってゆく波はいつまで見てても飽きません。本当に人の気を狂わせます。
ついつい引き込まれてしまいそう。あの先の闇の中に。一体幾千もの女が・・・?

しかしあやこの肢体はそのままそっと砂の上に横たわっています。
なんて神々しい。至上の笑みを受けとめて満月のように丸く止まったあやこの顔。もう2つの満月が胸元にゆるくおさまっていますね。
逆に空は三日月、その明かりが海に映り・・・ どうしてこんな情景に立ち会えるのだろう。あやこの厚みを帯びた女の脂肪の白さ、黄色い月、黒光りする砂、真珠色の波、こんなにたくさんの色が夜の海にあったなんて。

今回の作品で私は5体の女を裸で砂浜に転がしてしまった。
そんな想像の中には空気もなく温度もない。けれどこうして生身の女の人たちが現実の、しかも秋の海に横たわるということはハンパなことではないのですね。
撮影に入る前に私も実験したのですが、その日は風が強くちょっと寒いこともあり、体はたちまち凍えたのです。体全体が勝手に震えてしまうのです。「こりゃ大変だなあ」とこれから死体を演じて頂く女優さんたちのことが心配になったものです。寒いと撮れないのかも、と。
けれど幸運なことに女の死体の場面ではなぜか暖かい日だった。季節が多少寒いにしても我慢できなくなる・・・という程でもなかったのです。その日の前後日はふつうの温度。死体の日には必ず暖かい。今日のあやこさんの場合もそうだった、はずだだった・・・やけにぬくい。
昼間にはその陽気の中、順三郎と火露見が七輪でホッキ貝とシャケをのんびり食べていた程だった。あれはおいしそうだった。
が、あやこさんが横たわっている頃、なんとなくこの紙が湿ってきたのです。あれ、なんかおかしいなと思っていたら、晩ごはん終了後パラパラと雨が。雨は次第にその滴をはやめ皆んなを濡らした。秋の雨足は早かったのだ。そして撮影中止。

でもこのことは色んな意味で良かったというのはのちのち分かることになるだろう。
良かったことの一つ。雨が降る直前の、あの水の飽和した空気の中の物語。
人の肌がうっすらと濡れ空気を泳ぐ。滴を待つ物語。
火露見は滴にとりまかれた2人を滴を通して見つめる。滴は決して見えないけれど、水の予感でたっぷりの天候はそんなお芝居に役立ったのだろう。
まあ、続きは明日、水をくぐって行きましょう。

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