撮影12日目。 ようやく初めてのお休みの日なのです。
ようやくゆっくり寝られる・・・と思っていたのですが、いろいろやる事は山積み。
スチールの堂地さんが「フィニステール」の写真を撮る、と張り切っている。私もそれにお付き合いさせてもらった。「フィニステール」に上がっていったら、もうそこは写真スタジオになっていて、カメラマン堂地がすっかりテンションを上げてシャッターを押していた。
皆は今ごろ何をしているんだろう。 「フィニステール」にツルちゃんご出勤。廣田君の同伴というカタチだった。 彼女に聞いたところ、午前中そばのコインランドリーはスタッフルームと化していたそう。入れ替わり立ち替わり十数日分の汗や唾液や分泌のしみこんだ洗濯物をかかえて出入りしていたらしい。 そりゃ大変だろうな。 だって撮影中ほとんど時間がなかったから・・・。 早く洗濯を終えて遊びに行くといいよ・・・。イカ刺しもいっぱい食べるといいよ。函館山に登って夜景も見るともっといい。
私も個人的に酒が飲みたい・・・と思っていたが、どうやらそういう訳にもいかなそう・・・。 最近ちっとも飲んでないな。 「eau de vie 」という話の仕事をしてるくせに。ゆっくりとそれを飲んでいないな。 いけない。
撮影が終わったら行こう、と思うけれど、きっと力が抜けてしまいどこにも行きたくなくなるのかも。 その時は浜辺で死体にでもなるか。 いや、寒いからいいや。
それにしてもつくづく思うのは、順三郎・岸谷さんの事です。
順三郎のやさしさでくるまれたはかなさ。 無関心でコーティングされた本能。
岸谷さんの眼光は限りなくやわらかい。ろうそくが障子に反射しているかのよう。あのゆったりとした物腰はすでにあやこ、鰐淵さんのそれだ。魚のようにゆらゆら歩く・・・ そういえば彼は「魚一心」(函館の居酒屋)でも燗酒とともにお刺身をゆらゆらと食していた。
何が言いたいかというと、岸谷さんは函館に入った時点で、すでに順三郎になっているのです。 彼がこの役を大変好んでいてくれるというのは、私もとってもうれしい。
数日前、車で用事を足していてふと角を曲がったら、街の中にたたずんでいる岸谷順三郎を発見。声をかけると「いやあ助かった」何か袋を下げている。何買ったの? 「いやあ、カニ買っちゃったよ。朝市で」ホテルの冷蔵庫に早く入れたがっていたらしい。 ○○商店と書いてあるカニ袋をゴソゴソさせて車に乗り込むと、やはりカニの匂いがした。 その匂いごしに眺める順三郎は素敵だった。 そうね、順ちゃんもカニくらい食べるか。 あやこへのおみやげだったりして。
順三郎「あやこさん、カニですよ」
あやこ、ゆっくり振り向きにっこり笑う
あやこ「あら、花咲ガニね。もうアタシ、ウニ食べ飽きちゃったの。だから嬉しいわ」
順三郎「やっぱり函館はカニですよ」
あやこ「あら、こないだはイカだったじゃない」
順三郎「なぜか最近、イカばっか食べさせられんだよ」
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