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eau de vie撮影レポート
■Vol.6■ 10月11日「雨のスーツケース女」

撮影6日目にして初めての雨が降る。かなり激しい雨音がフィニステールを朝から包んでいます。
雨の中、スーツケースを引きずった自殺志願の女がフィニステールに現れる。
「タチマチミサキ、っていう所には歩いて行けるんですか?」
家族を捨ててまで彼女と一緒になろうとしなかった、まぁよくいるパターンの男に深く傷ついた女。 旅先で死ぬ覚悟を決めたものの、やはり愛した男にもう一度愛されたいと願う。それは女の本能から出てくる何かであり、それを相手に伝えたく、幾度も幾度も、手紙を書いてはやめ、書いてはやめ・・・ そしてフラフラ重いスーツケースを引きずって、旅を続ける女なのでしょう。スーツケースの重さは単に中身だけのせいではなく、こんなに自分の荷物を重くしてしまって、と彼女自身もからにじみ出す、失望の重量でもあるのでしょう。それでeau de vieが生まれ、飲み、死ぬ。

まさしく、そんな女が歩く日には雨が降るので、今日の雨もまんざら悪いものではないのです。 
フィニステールを後にして、線路をさまようシーン。 やはり雨、大雨。
その中での撮影はつらかったけれど、スーツケースの女役・小林沙世子のあふれる悲しみ、そして悦びはすさまじく放出され、雨粒を通してカメラに映ったのです。
段取り中は雨だったのに、本番に入る位から風が吹き出し、水に濡れた体は冷やされ凍えました。 しかし、その分すごい画ができました。 今まで見たことのないような。
まだ撮影に入る前、「eau de vie」の女たちのたたずまい、そして彼女らの背景は、ポール・デルヴォーの絵のようにしたいと考えていました。
青白い鉄道の線路、列車、夜空、簡潔な背景、そして女。
すべてが唐突でありながら、自然にまとまり、一つの小宇宙を作っている・・・
あぁ、だったらあれは紛れもなくそうでしょう。
それは見てからのお楽しみにしてください。 私も思い出すと・・・ 胸がコトコトと音を立ててくるようです。

無事、今日は終了。帰り道に通った函館の街は、まだ雨の余韻が残り、しっとりと重く、ひんやり眠っているかのようでした。本当の意味での塗れた街角だったのです。
じゃぁ、何日か前の順三郎とあやこの歩きのシーンは・・・。「路面濡らしたのは誰だ?」と誰かが言った。

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