『オー・ド・ヴィー』函館港イルミナシオン映画祭にて
『オー・ド・ヴィー』は11月27日深夜、最終段階であるダビング(音入れ・整音)を終え、ほぼ完成した。今回は、ハイビジョンの24プログレッシグというカメラで撮影し、そのハイビジョン・バージョンの完成品を映画祭で上映したのである。
10月6日に撮影に入り、10月28日にクランク・アップ。その後一ヶ月でともかく上映にこぎつけたにで、ともかく相当にハイペースであった。我々スタッフも函館で上映する今回が、初めて完成品を見る機会であり、かなり緊張した。なんせ、音が入ってつながったものを初めて見るという時に、観客の人たちと共にいること事体、初めてである。例えていえば、母親の体からこの世に生を受けたばかりの、母の体内の粘液を体中にまとわりつけたまんまの、まだ顔の表情すらわからない新生児を見る父親の心境である。
11月30日クレモホール。映画祭の初日の上映はまさに、そんな心持ちで始まったのである。僕は、ほぼ一番後ろの席で観ていたので、通路にもあふれかえった200人近くの観客の姿をおぼろげに感じながら観ていた。多くの観客は、ワンシーン、ワンシーンをかたずを飲んで見守ってくれるように、僕には感じられた。この先、どう展開するかわからない物語の行方を、けっこうくぎづけになって観てくれていたのだろうと思う。けれど、かなりゆったりとしたリズムで進むこの映画を、本当はどんな気持ちで観てくれていたかは分からない。時には時計を見る人、チラホラ。ここが笑いどころと思っていたところで笑わず、全く意外なところでクスクス笑う人、少々。隣に座っている朝加真由美さんが、物語のクライマックスのところで、少々、鼻をすすっているようだ。しめたもんだ。けれど、すすり声は場内、ほとんど聞こえない。おかしいな。泣かせどころなのに・・・と思いつつ、あがた森魚さんの音楽がラストをしめる。ローリングタイトルも終局を迎え、いざ拍手かと思いきや、これもまたちょっとした間があって、拍手。拍手。けっこう大きな拍手だった気もするが、勘違いか・・・。
終了後、すぐに舞台上に呼ばれた僕は、なんだかキョトンとしていたように思う。観客もキョトンとしていたように感じ、マイクを向けられた僕は「皆さん、キョトンとしてますね。僕にもよく分からないんです」とアホな一言を発してしまう。これじゃ観客はますますキョトンとしてしまう。それで「でも『草の上の仕事』の時も『月とキャベツ』の時も、最初はキョトンとしていた。そういう作品は、だんだんと皆の支持を得ていくのです」とかなんとかフォローにもならないようなことを、またしても言っている。
あがたさんが関ったスタッフを全員、舞台上にあげている。キャストも含め20人近いスタッフが今回は上映に参加していた。何人かのスタッフは、この作品に対する想いと感想を述べた。そうだよ。このスタッフの人たちとともに、夜も眠らず、一緒になってつくってきたんじゃないか。なんだか全員一丸となって、この『オー・ド・ヴィー』を支えてきたんじゃないか。これは映画祭の人たちや、函館の人たちとともにつくってきたんじゃないか。すごいパワーだったよな、みんな・・・と思いながら、皆の発言に感動し、なにかキョトンとしてたんだ俺は、と思ったのである。皆さん、すいません、あの時は・・・・。
12月1日は、協力や協賛をしてくれた方たちの為の試写が3回行われた。場所は、ロープウェイから降りた金森ホール。映画祭実行委員長の米田哲平氏、僕、脚本の鵜野幸恵さん、あがたさんの順で、上映前に舞台挨拶。昨晩とはうって変わって、僕は自信あり気にこの場所に臨む。
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